働き方改革で残業がなくなる。

 働き方改革の一環で、業務効率向上のための対策や、テレワークや在宅勤務への切替などの結果、残業時間が以前に比べて大きく減った、残業がなくなったという会社様も増えているのではないでしょうか。

 そのような状況の中で、今まで固定残業代を支給してきたが、残業がなくなったのだから固定残業代の支給は不要だろうという考えも出てきます。

 そこで、固定残業代の縮小・廃止について、考えてみましょう。

支給されている固定残業代は、約束された労働条件

 会社によって、社員全員に固定残業代を支給している場合もあれば、一定の社員に固定残業代を支払っている場合もあると思います。どちらにしても、固定残業代の支給を雇用契約書に明示している以上は、社員と会社の約束された給与額になります。

 そのため、固定残業代の縮小や廃止は、社員の不利益変更となるので、十分、留意したうえで行うことになります。

 労働条件の変更は、労働契約法の8条9条10条に、定められています。8条では、労働条件の変更は労使の合意でできるとしています。

そして、不利益変更については、9条で合意なく、就業規則の変更で不利益変更はできないとしています。つまり、会社側で作成する就業規則は合意を必要とせず意見を聞くのみで作成できるので、合意なく就業規則の変更をもって、不利益変更をしてはいけないと、定められています。

10条では労働者に就業規則を周知しており、かつ、労働者の受ける不利益の程度、変更の必要性、変更後の就業規則の相当性、労働者代表との交渉の状況その他を照らし合わせて合理的なものであるときは、労働条件は、変更した就業規則の内容となると、不利益変更の可能も定められています。

 これらの労働契約法の規定に基づいて、不利益変更となる固定残業代の縮小・廃止の可能性について、見てみましょう。

合理的であれば、認められる可能性がある就業規則の不利益変更

 固定残業代の縮小・廃止という不利益変更の具体的手順です。

固定残業代の縮小・廃止は、まず、社員の健康維持のため、長時間労働を是正した結果、残業がなくなるので、固定残業代を縮小・廃止することを社員に理解してもらうことです。不利益変更の必要性の説明です。

 次に、代替措置として一定期間、減額分を他の手当で支給する、その他基本給へ振り替える、数年かけて段階的に引き下げていくなど、緩和的措置をとることです。

あくまで、実務としては、固定残業手当の減額・廃止の必要性を社員へ十分に説明した上で、可能な限り経過措置や代替措置を設けるなどして、就業規則の変更と個別の合意取付けを行うことで、固定残業代の減額や廃止をすることは可能であると考えます。

 詳細な具体的合理性については、個々の事案によりますので、できる限り、社員の合意を得られるように、労使の話し合いをして、交渉の経緯を残しておくとよいでしょう。

>>労働条件変更で困ったら、社労士 橋本事務所へご相談ください。

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